さて、今回は毎年5月5日こどもの日に長野県上伊那郡中川村で開催されている「信州なかがわハーフマラソン(通称ナカハマ)」について書いてみたいと思います。


いわゆる市民マラソン大会ですが、人口が約5,000人の村に、ランナー約3,000人が参加する人気大会です。ランナーのための情報サイト「RUNNET」内にあるクチコミによる大会評価サービス「大会レポ」では、2010年に年間総合7位、今年2012年も5月の時点で年間総合8位という評価を得ています。その人気の秘訣を分析します。


この大会は主催者が自治体(行政)ではありません。村の有志が作る実行委員会が主催で、大会予算としては「村の税金を使って運営されているわけではなく、参加者からの参加料金と、地元の個人企業や個人協賛を募ってお金を集め、さらにそれ以上に米や野菜や果物などを村民の善意で無償提供していただいて」大会を作っています。(「 」部分は大会サイトから抜粋)

その特徴を箇条書きにしてみます。

●中央アルプスと南アルプスに挟まれ、天竜川が流れる風光明媚な景色が楽しめる。
●あたかも村民総出に感じるボランティア運営やコース上の私設エイドステーション。
●交通アクセスが決して便利な土地ではないため、大会オフィシャルバスツアーも設定されている(東京、名古屋)。バスツアー参加者はバス車内でゼッケンが受け取れる上、オリジナルTシャツももらえる特典あり。
●選手受付は大会当日だけでなく、大会前日から開始されており、当日の受付混雑の緩和が図られている。
●会場で参加受付を済ませた後は「外れなし」の抽選会に参加でき、地元の農産物がもらえる。
●コース上には必要十分なエイドステーションあり。特に名物はアイス「ガリガリ君」ステーション。
●コース上では村民の方が選手名簿から名前を探して、名前で応援してくれる。
●フィニッシュでは優勝者だけでなく全完走者にフィニッシュテープを張ってくれる。
●フィニッシュ後はボランティアスタッフから全完走者にバスタオル(参加賞)をかけてくれる。 ●フィニッシュ後は全完走者に「飲料水、バナナ、手作りおにぎり」の詰まった袋が配布される。 ●フィニッシュ後に全完走者に完走証が発行され、部門別順位には「飛び賞」もある。
●参加賞のバスタオルはもちろんのこと、大会ロゴ、大会パンフレット、大会ポスター、そして販売用の大会記念品(Tシャツ、ジュース、ジャム、おまんじゅう)は全て一流デザイナーのデザインによる洗練されたデザイン。他の大会とは一線を画している。素朴な村の大会と洗練されたデザインとのギャップが好評。
●ゼッケンには各自の「都道府県」が大きく印刷されており、参加者同士でそれをきっかけにコミュニケーションをとりやすい。
●5年連続出場者は特別に金色のゴールドゼッケンとなっておりプレミア感を高めている。
●ゼッケンに表示されているスポンサー企業は、通常の大会だと数社ぐらいであるが、この大会では村内の個人企業が数十社スポンサーになっているため、ゼッケンのバリエーションが数十パターンもある(1枚のゼッケンにつき1社表示)。
●大会会場でフィニッシュ後に任意のアンケート用紙の提出を求めており、提出すると粗品がもらえる。粗品であっても参加者からのアンケート回収率は高まる。
●回収されたアンケートに記載された参加者からの意見、感想、批判などが生きた教訓となり、次回の大会運営に必ず反映される。


挙げだしたらキリがないほど無数の工夫がわかります。結局のところ、根底にあるのは「参加者へのおもてなし」という気持ちです。これが参加者に伝わるからこそ評価が高いのだというのが結論です。もちろん、大会運営が100点満点の完璧などということはありえず、毎回何らかの課題事項は発生しています。しかし課題点や批判があれば、それを反省し、次回の運営で改善するといった積み重ねで今大会が成り立っています。他の大会の主催者の皆様にも非常に参考になる大会だと推薦いたします。

今でこそ参加者3,000人という規模ですが、ここに至るまでの数年間、今大会のエントリーが始まると、大会実行委員会メンバーの皆さんが手分けして、日本各地の市民マラソン大会の会場に出向き、信州なかがわハーフマラソンのパンフレットをその大会の参加者に手配りしてPRしていった努力を積み重ねられています。

なお、蛇足ながら今大会の公的な評価という意味では、「長野県からの補助金を有効活用したモデルケース」として長野県知事賞も受賞している大会であることを付記しておきます。




 

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