今回のコラムは、マラソン大会の会場で実際に起こった出来事です。

とあるマラソン大会で、フィニッシュしたのに自分の記録が出ていない
という参加者の方(仮にAさんとします)がいました。スタッフが
お聞きしてみると、計測用のチップ(シューズに装着するタイプ)は
確かに装着して走ったとのこと。

チップを装着していたのに計測されていないとなると、チップの故障
でしょうか。あってはならないことですが、機械もいつかは壊れます。
何十万分の一の確率では起こらないとも限りません。

ところが後からデータを精査したところ、このトラブルの原因が判明
したのです。

結論から言えば、Aさんは
自分のチップではなく、そのへんに落ちていた
他人のチップを付けて走っていた

のです。


(1)この日、レース前に「選手受付で受け取ったチップを落として
 しまったので再発行してほしい」という参加者Bさんがいました。
 スタッフはBさんに対して予備のチップを発行しました。
 なお、BさんとAさんは全くの他人です。

(2)Aさんはレース前に着替えをしてゼッケンやチップを身に付け
 ようとしていたとき、ふと自分のそばにチップが1つ落ちているのを
 見つけました。ここでAさんはこの落ちていたチップを装着し、
 反対に本来の自分のチップを装着しないという(!)行動に出ました。

(3)レーススタート!
 Bさんは予備のチップを装着してレースに参加。Aさんよりも速く
 フィニッシュしました。もちろんタイムは正常に計測され、この時点
 でBさんの記録が確定します。

(4)Bさんから遅れてAさんがフィニッシュ。Aさんは本来Bさんの
 付けるべきチップを付けていますので、データの上ではAさんでは
 なくBさんがフィニッシュしたことになります。しかし、この時Bさん
 はすでに完走済みで記録が存在しています。データ上、Bさんの記録が
 2つ存在することになってしまいます。こういう場合、あくまでも1度目
 のデータが有効で、2度目のデータは無効になります。

(5)したがってAさんは自分の記録がないという事態になったのでした。
 最終的にはAさんは自分のチップを付けなかったということで失格扱い
 になり、公式な記録は残らないことになりました。
(ただし参考記録として順位には含めませんでしたが、ご本人にタイム
 だけはお知らせしました)


くれぐれもその辺に落ちていたチップを装着してレースに参加するような
ことはしないようにお願いしたいものです・・・。




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