vol. 029 「究極の計測大会?」

これまでのコラムでも何度も述べてきましたが、タイム計測の仕事には
様々なリスクがあり、様々なトラブルが発生し得ます。それらに対応する
ことも私たち計測ディレクターの重要な仕事です。

ところで、毎年8月に神奈川県で開催されています「湘南オープン
ウォータースイミング」という大会は、ある意味で究極の計測大会だと
言えます。海で泳ぐ遠泳大会であるオープンウォータースイミングは、
競技中の事故やトラブルが参加者の命の危険に直結しています。
このため、この大会では単にゴールタイムを計測するというだけでなく、

「誰が(何人の選手が)エントリーしているのか?」
「誰が(何人の選手が)受付を済ませたのか?」
「誰が(何人の選手が)スタートしたのか?」
「誰が(何人の選手が)リタイアしたのか?」
「誰が(何人の選手が)ゴールしたのか?」
「現在、競技中で海の上にいる選手は誰か(何人か)?」

という情報を全て管理しており、そのための専用システムが運用されて
います。参加選手の数が少なければ(数十人〜300人程度)、人力での
把握も出来ると思いますが、今大会には1,400人以上の参加者がおり、
システムでの管理は必須となっています。

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さて、湘南オープンウォータースイミングでは特にゴールタイムの計測
が「究極の計測」になっています。以下に詳細を述べます。

@基本的には選手の足首に装着されたICチップによって計測される。
  しかし、ごくまれに競技中にチップが外れてしまって、チップが
  ない状態でゴールする選手もいる。
Aチップが外れている選手をチェックするための専用スタッフを配置し、
  もし発見したらその場で即座にゼッケン番号とタイム(手動)をメモ。
Bチップの有無にかかわらず、すべての選手(1,400名以上)のゴール
  タイムをストップウォッチ(手動)でも計測する。
Cゴールしたすべての選手(1,400名以上)のゼッケン番号を順番に
  紙に記入する。
Dチップで計測されたデータ(@)と、紙に記入されたゼッケン番号(B)
  を全件照合する。
Eすべての選手のゴールの様子はバックアップ用のビデオでも撮影。

これはまさに究極の計測方法と言えます。
たとえICチップが付いていなくても、あるいは
チップが壊れていても、1人も漏らさずに完全な
計測をすることが出来ます。ただし、膨大な人数
のスタッフが必要です。通常の仕事ではとても
そこまでの人手やコストを投入できないほどです。


湘南オープンウォータースイミングという特別な大会における、特別な
需要があるからこその、特別な方法だと言えます。そもそも、ゴールした
全選手のゼッケン番号を記入するということも、たとえば数万人規模の
マラソン大会では人力では不可能でしょう。

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毎回、どの大会でもここまでの体制で計測できるのなら、ある意味で
計測ディレクターは何の心配もいらないのかも知れません・・・。
しかし、限られた条件(予算、人手など)で現実的に仕事をすることも
また、求められる重要な要件でもあるのです。