私たちのタイム計測の仕事道具と言えば、何といってもICチップです。
現代のタイム計測業はICチップによって成り立っていると言っても
過言ではありません。

さて、ICチップの特性を一言で表現するならば「電波である」と
言えると思います。特定の周波数帯の電波を発信するアンテナの
エリア内をICチップが通過すると、ICチップは自身固有のID番号
を発信します。これが計測の基本的な仕組みです。
目には見えませんが電波によって成り立っています。

ところで電波を取り扱う上では、いくつか注意しなければならない
事柄もあります。法的な面でいえば電波法という法律がありまして、
使用できる周波数帯や電波の強さはすべて法律で定められています。
もちろん計測工房では法律に準拠した製品を使用していますが、
今回のコラムで取り上げたいのは、「電波は水と金属の影響を
受ける」ということです。


まず水です。周波数帯によっても影響の程度は異なりますが、
電波は水の影響を受けます。屈折や減衰といった現象が見られます。
業界に伝わる都市伝説には「雨の日は、晴れの日よりもアンテナの
感度が良い(または悪い)」といった話があります(どっちなんで
しょうね?)。
実際のところ、タイム計測に支障があるのかどうかという観点で
言えば、影響はないと言って問題ありません。
ただ晴れの日に比べると、アンテナの感度が微妙に違っている
感じはありますね。


次に、水よりも怖いのが金属です。電波は金属の影響で反射したり、
増幅したり、減衰したりします。タイム計測をする場面で周囲に
ありうる金属としては、地面のマンホール、鉄板、鉄格子、ゴール
ゲート、あるいは計測する場所が橋梁上だったりすると、橋そのもの
が金属だったりしますし、地下鉄の経路の真上というのも強烈な金属
です。

タイム計測に及ぼす影響で言えば、特に短波(HF・13.56MHz)や
長波(LF・135KHz)を使用するICチップでは影響が大きいです。
これらのシステムは、基本的に金属に触れる場所では設置できません。
あるいは設置したとしても受信感度が大幅に低下するなどのリスクが
あります。ちなみに現在、業界で主流である超短波(VHF・300MHz)
のICチップでは致命的な影響はありませんのでご心配は不要です。


ICチップによるタイム計測システムと言っても、
機械的に常時同じパフォーマンスを発揮する
わけではなく、周囲の影響(特にここでは水
と金属を取り上げましたが)を受ける
ということが
おわかりいただけたでしょうか。

なにぶん電波は目に見えないので、私たちプロにとっても経験則
だけが頼りのような部分でもあります。

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