ICチップによるタイム計測は正確無比。 
というのが一般的なイメージだと思いますし、実際、ICチップがなければ数千人、 
数万人の参加者が参加するマラソン大会のタイムを計測することは困難です。 
しかし、計測チップも万能ではありません。その性能を生かすも殺すも、使い方や 
運用方法によるところが大きいのです。今回は、計測チップが万能ではないという 
お話です。(なお、このコラムの内容は事実を基にしたフィクションです。) 
とある市民マラソン大会は10kmレースでした。この大会は1周5kmのコースを2周する 
という設定になっていました。 
10kmレースだと市民マラソンの男子の場合、優勝タイムが31分〜32分ぐらいです。 
また、ゆっくりゆっくり走る方なら1時間以上かけて完走します。 
仮に1時間30分で完走するとすれば、1周(5km)あたり45分というペースです。 
さて、このレースの結果は、 
 順位  ゼッケン  氏名    都道府県  タイム 
  1位  14    ●田 太郎 (東京都)  32分44秒 
  2位  66    ▲川 二郎 (神奈川県) 33分09秒 
  3位  103    ■村 三郎 (山梨県)   33分20秒  ・・(以下略) 
でした。レースの結果をもとに表彰式がおこなわれました。しかし、なぜか表彰式 
に第3位のゼッケン103番の■村三郎さんは現れませんでした。大会主催者は仕方なく、 
第3位不在のまま表彰をおこないました。 
大会の結果は、翌日の地元新聞に掲載されたのですが、その後、大会主催者の 
ところへ一本の電話がかかってきました。例の第3位のゼッケン103番の選手から 
でした。 
「あのー、今日の新聞を見たんですけど・・・。私が3位になっているのは何かの 
 間違いではないでしょうか?」 
「えっ。と、言いますと」 
「実は走っているうちに足が痛くなって、
 途中棄権して1周でやめたんです。」 
「!!!」 
なんと、3位になっていたゼッケン103番の選手は途中棄権だったのです。 
1周でやめて、そのままフィニッシュ地点の計測マットの上を通過してしまって 
いたのです。そのときのタイムが33分20秒ということで計測されてしまいました。 
この話はフィクションですが、こういうことは時々あります。実際にフィニッ 
シュ地点は3番目に通過しているわけで、計測チップもきちんとそれを計測して 
います。フィニッシュ地点にいる大会役員さんも計測スタッフも、その人が2周 
したかどうかまではわかりません。 
(まあ、選手の走ってくるスピードや走り方で、ある程度の不自然さはわかるか 
 も知れませんが、それも役員やスタッフの勘頼みです) 
結局、大会主催者の判断で3位の記録は取り消しになり、4位以下が1つずつ 
繰り上がることになりました。 
もちろん、こういう場合に周回数もチップで管理するという方法は可能です。 
ただし、その分、コストや運用の手間は増えますが。 
計測チップが万能ではないという一例でした。